2025年度補正予算が、2025年12月16日に国会で成立しました。今回の補正予算は、度重なる物価高騰や医療・介護分野における深刻な人手不足を受け、次期制度改定を待たずに実施される緊急的な支援策です。
本記事では、「情報が多くて整理できていない」「事業所として何から取り組めばよいのか分からない」と感じている訪問介護事業所の管理者さんに向けて、補正予算のポイントと実務に活かせる情報を分かりやすく解説します。
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目次
2025年度補正予算で介護現場はどう変わるか
12月の補正予算確定に先駆けて、11月28日に「強い経済を実現する総合経済対策」が閣議決定されました。
そこでは「医療・介護等支援パッケージ」を早急に措置することで医療・介護・福祉サービスを安心して受けられる体制を整備することが打ち出されました。
- 医療・介護分野への補正予算となった背景
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これまでも医療・介護分野では、さまざまな支援策が講じられてきました。しかし、人材不足の解消や賃金の十分な引き上げには至らず、さらに物価上昇が追い打ちをかけたことで、事業の継続そのものが困難な状況に陥る事業所も出てきています。
下のグラフは老人福祉・介護事業者の倒産件数をグラフ化したものです。2025年度は2年連続で過去最多となり、高齢化・重度化した介護ニーズに反して、供給側は縮小していることが分かります。しかも、この176件のうち半数を超える91件が訪問介護事業という結果にも驚きです。

グラフ::東京商工リサーチのグラフを元に編集部でアレンジ - 「医療・介護等支援パッケージ」で処遇改善できる!
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閣議決定された「医療・介護等支援パッケージ」は、具体的に次の3つへ予算配分されました。
- 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業
- 介護事業所等に対するサービス継続支援事業
- 介護施設等に対するサービス継続支援事
これらの事業には、総額3,281億円の予算配分(医療・介護では全体1兆3,649億円のうち)がおこなわれ、従前の処遇改善加算の対象外であった訪問介護、ケアマネジャー等も一定の要件を満たすと支給されることになりました。
- 訪問介護を取り巻く現状と補正予算の位置づけ
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「医療・介護等支援パッケージ」は、訪問介護を含む介護現場の賃上げ支援や職場環境改善、物価高対応のサービス継続支援、ICT導入・経営改善支援など介護業界を包括的に支援するという意図が込められています。その名の通り、パッケージ化された支援事業を自事業所の課題に応じて複合的に活用できる点が特徴といえるでしょう。
ヘルパーの賃金を月19,000円アップする方法
今回の補正予算では、介護従事者の処遇改善、とりわけ賃上げを後押しすることが重要な目的の一つとされています。
介護職員への処遇改善は以前から施策として取り組まれてきましたが、他産業との差を埋めるまでにはいかないようです。
そこで、今回の補正予算では「介護分野における物価上昇・賃上げ等に対する支援」として次のような賃上げ支援をおこなうことが決まりました。
ご紹介する3つの対策を取れば、一人当たり最大月19,000円の賃金アップが期待できます。
- その1 介護従事者への賃上げ支援で10,000円
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対象となるのは処遇改善加算を取得している事業者です。今回の対象はケアマネジャーや訪問看護、訪問リハビリも処遇改善加算と同等の要件を満たせば取得できます。
なお、法人本部の職員も補助金の対象となる介護サービス事業所で業務を行っていると判断できる場合には、賃金改善や職場環境改善の対象に含めることができます。また、地域包括支援センターにおいても介護予防支援事業者として指定を受けていれば対象となります。 - その2 協働化に取り組む事業所の介護職員への賃上げでさらに5,000円確保
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訪問介護における協働化とは、ケアプランデータ連携システムに加入している(または見込み)ことを指します。
ケアプランデータ連携を活用するメリットは、毎月の実績報告やケアマネジャーのケアプラン交付を国保連のサーバーを介してデータでやり取りできるので、業務効率が図れる点です。
まだ連携登録をしていない事業所は、今回の補正予算の中でデータ連携利用料21,000円(年間)が令和8年度中無料になるので、協働化への取り組みを一気に進めて、補正予算で5,000円確保しましょう。なお、ケアプランデータ連携に加入していることを証明する資料の提出義務はありませんが、都道府県の求めがあった際には「使用画面のスクリーンショット(撮影時点がわかる形で撮影されたものに限る。) 」を提示できるようにしておく必要があります。
- その3 職場環境改善に取り組んだ事業者への支援で4,000円確保
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処遇改善加算を取得し、なおかつ職場環境改善計画に取り組む事業者には、一人当たり月4,000円の支援金が支給されます。これは、人件費にあてることも認められているので、賃上げの一助になります。
ただし、職場環境改善経費の補助対象に介護テクノロジー等の機器購入費用は含まれません。
国からの追加資料においても「PC端末等の機器の購入費用は対象経費として適当ではない」と明記されましたので、注意しましょう。
訪問介護事業を守る予算も補正された
今回の補正予算は、賃金アップ対策だけではありません。介護支援パッケージには人材不足や燃料費高騰の影響を受ける事業経営に対しても、施策が打ち出されました。
- 「介護事業所等に対するサービス継続支援事業」
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この支援事業は、近年の物価上昇のあおりを受けて、運営にひっ迫している事業者への救済施策といえます。
補助の対象となるものを一部紹介します。
訪問介護事業では一律の補助額ではなく、訪問回数の延べ件数に応じて上限が設定されています。

参考:「医療・介護等支援パッケージ」及び「重点支援地方交付金」の双方の活用について |厚生労働省 - 「訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」
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訪問介護は、自治体からの支援体制や地域性、事業所の規模によって、運営の難易度に大きな差が生じています。
とはいえ、在宅サービスの中核を担う存在であり、地域住民からのニーズも非常に高いサービスです。
今後は、利用者の重度化への対応や看取り支援など、果たすべき役割はさらに大きくなるといっても過言ではありません。
国は、訪問介護のサービス提供体制を強化することで、在宅生活を支える仕組みを持続的かつ安定的に維持しようとしていることがうかがえます。
- 実施要件はマンパワーから地域づくりまで様々
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訪問介護を担う人材の確保や事業所の経営支援、さらには通所介護の職員が訪問介護に関わる取り組みなどが盛り込まれ、深刻化するヘルパー不足に対して、国として一定の方向性を示した形となっています。
訪問介護等サービス提供体制確保の具体施策は以下のとおりです。

参考:介護保険最新情報Vol.1448(令和7年12月17日)|厚生労働省
よくあるQ&A:これだけは押さえておきたいポイント
Q1. 賃金アップの予算はいつまであるの?
令和7年12月から令和8年5月までを対象期間として、賃上げ相当額の予算がつけられました。
対象は令和7年12月にサービスを提供している事業所です。
ただし、次のようなケースは例外的な取り扱いとなります。
- 令和7年12月の報酬が大規模改修や感染症まん延により著しく低い場合
- 令和7年12月のサービス提供分が月遅れ請求となった場合
これらの事由であれば事業所判断で令和7年12月から令和8年3月までのいずれかの月を基準月にできます。
また、令和8年1月から3月までに新規開設された介護事業所は、初回サービス提供月が基準月となります。
なお、これらの対応をとる際、都道府県への事由届提出は不要です。
Q2. 申請先や手続きの流れを教えて
「介護保険最新情報Vol.1454(令和7年12月25日)」では、介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関する要綱から申請チェックリスト、様式まで記載されています。ただし、都道府県によって様式が異なる場合もあるため、都道府県のサイトなどで確認しておくほうがよいでしょう。
以下は、手続き後の流れです。

Q3. 医療・介護等支援パッケージと重点支援地方交付金を上手に併用する例を教えてください
令和5年から始まっている「重点支援地方交付金」は、国の事業とは異なり各都道府県が実施する光熱水費、燃料費高騰への支援事業です。今回の補正予算で国が介護従事者に対する支援をおこなったわけですから、併用例を整理すると次のとおりです。
対象ごとに事業をうまく活用し、今回補正された予算による賃上げへの上乗せや、補正予算対象事業の支援対象者や対象経費を広げる横出しとして交付金を活用するといった方法が効果的です。

Q4.令和8年5月までの予算なら申請する手間がかかるだけでは?
手間はかかりますが、申請する意味は十分にあります。
なぜなら、今回の賃上げ支援は、令和8年5月までの時限措置ですが、この補助金で引き上げた賃金水準は、その後の令和8年6月からの臨時介護報酬改定(処遇改善加算の拡充)につなげていく“土台”として位置づけられているからです。実際、国は補正予算による賃上げを一過性に終わらせず、次の制度改定へ連続させる方針を示しています。
まとめ
いま介護業界には、賃上げを支援し、経営を後押しする追い風が吹いています。今回の補正予算を上手に活用することで、人材確保や安定した事業運営につなげることができます。
申請時期や窓口は自治体ごとに異なるため、自治体のホームページなどをこまめに確認しておくことが大切です。
なお、「書類作成や手続きが不安」「できるだけ効率よく活用したい」という方は、カイビズの補助金申請サポートを利用するのも一つの方法です。
カイビズでは、こうした緊急的な補助金の申請もサポートしており、複数自治体での申請実績があります。自治体ごとに異なる制度についても確認し、サポートできますので、「手続きが面倒だな」「申請したいけど時間が取れない」と感じたら一度相談してみてください。
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この記事の監修者
カイビズ編集部

訪問介護事業所を自社で運営してきた実績をもとに、介護現場での課題に即した情報発信を行っています。
加算取得支援、報酬請求代行、採用代行など、介護・障害福祉分野の経営支援に特化したノウハウを有しており、制度改定や実務に関する最新情報をわかりやすく解説しています。
