訪問介護の管理者さんにとって、もっとも避けたいのが、特定事業所加算に関する返還ではないでしょうか。ご利用者へサービスを提供して得た介護報酬が、要件の理解不足や手続きの見落としによって返還の対象となってしまうことは、決して特別な話ではなく、現場の実務の中で起こり得る問題です。
この記事では、令和6年改正を踏まえた特定事業所加算の実務に焦点を当て、返還につながりやすいポイントと取得要件をあらためて整理します。体制を見直すことは返還リスクの予防だけでなく、サービスの質の向上にもつながります。
忙しい日々の合間に、ぜひ最後までご確認ください。
なお、カイビズ編集部では特定事業所加算の取得ステップを解説した資料を無料で配信しています。
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訪問介護向け- 特定事業所加算取得のためのステップ解説

本資料では、特定事業所加算の取得の要件やステップを分かりやすく解説。
各サービスごとの異なる要件や、加算取得でつまずきやすいポイントを明確にし、スムーズな申請を支援します。
特定事業所加算は、サービスの質を向上させながら収益を安定させるための強力な手段です。
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訪問介護で押さえるべき特定事業所加算の返還リスク
訪問介護の特定事業所加算は区分別に基本報酬へ上乗せされます。
区分は5段階ごとに算定率が設定されていますので、算定条件を満たすほど区分があがり、報酬が上乗せされるという構造になっています。
| 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ | 加算Ⅴ |
| 20% | 10% | 10% | 3% | 3% |
- 月200万円の訪問事業で区分Ⅱをとっている場合
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月200万円の収益がある訪問介護を例に単純計算すると、月20万円が報酬に上乗せされます。つまり年間収益で考えると、基本報酬とは別に240万円の報酬が1年間で得られる計算になります。
とはいえ今回のテーマのように返還命令が出た場合、すでに得ている報酬からこの金額をさかのぼって返還することになります。想像しただけでぞっとします。 - 運営指導と「返還」の関係
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特定事業所加算の要件を満たしていない事実が判明し返還に至るケースの多くは、行政による運営指導の場です。
ただし運営指導の目的は加算の確認そのものではなく、人員配置や設備、運営基準が守られているかを点検することにあります。とはいえ、職員体制や記録もれなどサービス基盤に不備があれば、連動して「加算要件も不充足」となり、返還対象となります。
つまり、加算対策にこだわるのではなく「基準遵守の視点」で体制を整えることが大切です。
- 思い込みは返還のもと
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返還は事業運営上の重大な不備を意味します。ですから、「行政から何も言われていない」「報酬が支払われているから問題ない」という思い込みは危険です。
令和6年度改定により要件は見直されており、また在宅系サービスでは運営指導の間隔が長いことから、改正以降指導を受けていない事業所ほど現行体制が基準に適合しているかを自主的に点検する姿勢が求められます。
現場で働くヘルパーは、制度対応や運営管理を担う管理者を信頼して業務にあたっています。その信頼に応えるためにも、要件チェックや制度理解の仕組みづくりを進めることは管理者の重要な責務といっても過言ではありません。
訪問介護事業所で実際に起きやすい返還パターンと対策
この章では実際に報酬の返還や指導の対象となったケースを例に挙げ、どうすれば返還を防ぐことができたのか、その対策を紹介します。
なお、本事例についてはWAMNET行政独立法人福祉医療機構で公開されている次の資料を参考にしています。
- 1)人員配置・常勤要件・研修体制に関すること
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事例①
訪問介護員ごとの研修計画が作成されていないにも関わらず、特定事業所加算(Ⅱ)を算定していた。
解説特定事業所加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)に比べて取得しやすいため、算定している事業所も多くあります。
取得要件となる体制整備には、文書による伝達や定期的な会議の開催のほか、訪問介護員ごとに年間の研修計画を立てる必要があります。
訪問介護では、運営指導時に以下の書類を提示することになっています。ひな型は特に決まっていませんが、定期的に見直したり、更新しなければなりません。- 業務継続計画(BCP)
- 個別研修計画・記録
- 苦情対応記録
- 事故・ヒヤリハット記録
- 個人情報管理関連書類
個別研修計画は年度ごとに雇用形態に関係なく全ての職員に対して計画を立てましょう。
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事例②
事例②常勤のサービス提供責任者を2名以上配置していないにもかかわらず、特定事業所加算(Ⅰ)を算定していた。
解説常勤のサービス提供責任者の配置ルールは、原則「利用者の数が40人又はその端数を増すごとに1人以上の者を配置」ですので、極端に言えば41人利用者がいるのに、サービス提供責任者が1名しかいないと、基準を満たしていないことになります。
そのほかにも加算(Ⅰ)の場合、人材要件は細かく厳しい基準が設けられていますので、下の表にある有資格者、実務経験どちらも条件を満たしているか、確認しておきましょう。
画像:サービス提供責任者の配置基準について|東京都福祉局を元に編集部で作成 - 2)記録・算定・届出管理に関すること
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事例③
サービス提供責任者が、訪問介護員に対しサービス提供に当たっての留意事項を伝達し、終了報告が確認できないのに加算を算定していた。
解説特定事業所加算の要件「利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告」は、(Ⅰ)~(Ⅴ)全ての区分において必須となっています。
なお、この場合の「留意事項」には以下のようなものが想定されています。
❝「留意事項」とは少なくとも、以下の事項について、その変化の動向を含め記載しなければならない。- 利用者のADLや意欲
- 利用者の主訴やサービス提供時の特段の要望
- 家族を含む環境
- 前回のサービス提供時の状況
- その他サービス提供に当たって必要な事項
うち、④以外については、変更があった場合に記載することで足りる。❞
- 3)運営指導対策のポイント
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- 属人化させない
- ひとりの人に仕事を集中させてしまうと、その仕事ができる人が他にいない、ミスが放置されるというデメリットがあります。複数のスタッフで業務を分担することは、リスクを分散させることにもなります。
- 運用チェックを習慣にする
- 事業所の運営状況を点検・評価する自主点検は、少なくとも年1回行うことが定められています。
自主点検は不備の早期発見と改善につながり、適正な事業運営を維持することができるため定期検査として実施することが重要です。
- 事業所の運営状況を点検・評価する自主点検は、少なくとも年1回行うことが定められています。
- 外部の支援を頼る
- 自事業所が適切な人員配置や加算を取得して健全な運営がおこなえているかどうかを、第三者に客観的に確認、評価してもらうことも対策の一つです。
日々の業務の中では気づきにくい算定リスクや体制上の課題を専門的視点で整理することで、監査対応力の向上や経営の安定につながります。 - こうした点検や運営支援について具体的な方法を知りたい場合は、カイビズの提供する支援サービスの資料を確認し、自事業所に適した活用を検討してみることも有効です。
- 自事業所が適切な人員配置や加算を取得して健全な運営がおこなえているかどうかを、第三者に客観的に確認、評価してもらうことも対策の一つです。
- 属人化させない
よくあるQ&A:返還に関する内容
運営指導などで要件に該当しない点を指摘され、結果として報酬返還となる事態は、管理者として避けたいところです。だからこそ、制度を正しく理解し、日頃から算定要件を満たした運営を行うことが重要になります。この章では、管理者にとって押さえておくべき基本的なポイントを整理するとともに、これから特定事業所加算の取得を目指す方に役立つ情報をQ&A形式で分かりやすく紹介していきます。
Q1.特定事業所加算が返還になる主な原因は何ですか?
代表的な事例としては、研修体制が形骸化している、会議が実施されていない、職員割合の計算誤りなどが多く見られます。利用者の要介護区分の変化やヘルパー配置への対応など日々のサービス提供に追われる中で、加算要件の確認が後回しになってしまうことが一因といえます。
そのため、書類の整備だけでなく実際の運用との整合を確認し、内部点検を定期的に行うことが予防につながります。
Q2.返還命令が出た場合、金額や期間はどれくらい?
金額に規定はありませんが、不適切に請求した加算単位数×件数となります。
返還期間は、原則誤って算定していた期間(要件を満たしていない期間)すべてです。特定事業所加算は、単位が比較的大きく利用者全体に波及し、なにより経営面に与えるダメージが大きいとも言えるでしょう。
また、自治体によっては改善計画や過誤申立書の提出を求められる場合があるので、対応方法をよく確認する必要があります。
Q3.返還となるのは、基準に違反した時だけですか?
いいえ。運営指導マニュアルでは、以下の場合にも返還の措置をとるとされています。基準違反だけでなく不正請求や虐待による罰則などがその対象です。

そのほかにも「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」では、訪問介護の特定事業所加算についてのQ&Aが公開されていますので、確認しておきましょう。
まとめ
介護報酬の返還というとペナルティのように感じるかもしれませんが、基本的には本来受け取るべきでなかった報酬を整理して戻す手続きです。ただ、返還に至るケースでは基準を満たしていなかったり、請求内容を勘違いしていたりすることが多く、その結果として事業所の運営に関する指導や制限などの措置につながる場合もあります。
返還にならないか心配という管理者さんは、日頃から要件確認や内部チェックを続けながら、不安な時には専門的な第三者のサポートを受けることも対策の一つです。
専門家によるアドバイスが必要な場合は、カイビズの加算取得・運用サポートをご活用ください。
加算要件の確認から必要な書類整備、研修・体制づくりのアドバイスまで、事業所の状況に合わせて実務的にサポートいたします。
専門家の力を借りて確実な加算取得と持続可能な体制整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。
加算の取得・運用をサポート! カイビズアシスト –加算コンサルティングサービス

介護事業所の運営には、加算管理や報酬請求、採用活動など多くの事務作業が発生します。しかし、これらに時間を取られすぎると、肝心の介護サービスの質が低下しかねません。
「カイビズ アシスト」 は、介護事業所の特定事業所加算の取得・運用をサポートするサービスです。加算の取得までのフォローだけでなく効率的な運用方法など特定事業所加算に関する手続きをまるっとフォローいたします。
この記事の監修者
カイビズ編集部

重度訪問介護など自社で運営してきた実績をもとに、介護現場での課題に即した情報発信を行っています。
加算取得支援、報酬請求代行、採用代行など、介護・障害福祉分野の経営支援に特化したノウハウを有しており、制度改定や実務に関する最新情報をわかりやすく解説しています。
