令和6年度の介護報酬改定では、質の高いサービス提供と制度の持続性を確保するため、減算に関わる項目がより明確に示されました。すでに多くの事業所が対策に取り組んでいる一方で、現場では「小さな抜け漏れが減算につながるのでは」という不安もあるのではないでしょうか。
本記事では、令和8年度に向けてとくに訪問介護事業所がおさえておきたい最新ルールを、自治体の情報や厚生労働省の通知をもとに整理しました。経過措置も終わり、今後は小さなミスがそのまま減算に直結します。ぜひ、日々の運営を見直す際の参考にしてください。
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【訪問介護向け】令和8年度に向けた減算対策マニュアル

本ガイドでは、介護報酬における減算や減算項目への対応事項をまとめています。
令和8年度に向けて訪問介護事業所がおさえておきたい減算リスクと最新ルールを、自治体の情報や厚生労働省の通知をもとに整理。
「気づいたら減算対象になっていた」という事態を防ぐため、ぜひご一読ください!
目次
訪問介護で発生する主な減算(令和8年対応版)
そもそも「減算」とは、介護事業所が国の定めた義務を果たさなかったり、ルールに違反したりした場合に科されるペナルティです。訪問介護では、BCP策定と虐待防止の取り組みが令和7年3月まで経過措置とされてきましたが、いよいよ令和7年4月からは本格的に義務化が始まっています。
この章では、新しく始まったこの2つの減算措置について対策を詳しく解説していきます。
BCP(業務継続計画)未策定による減算
令和7年度より義務化されたのはBCPの策定だけではなく、訓練や研修の実施まで業務継続に関する一連の対応です。災害時や感染症まん延下でも業務を止めることなく、高齢者の自宅を訪問できるような具体的な対策が重要となります。
ではBCP未策定減算について注意すべきポイントを紹介します。
- 訪問系サービスも減算対象になる
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業務継続計画未策定減算の適用は、令和6年度より全介護サービスが対象ですが、訪問系サービスは1年間経過措置が取られました。つまり、訪問介護は令和7年4月から完全義務化となります。
運営基準上義務化されたのは、BCPの策定、訓練(シミュレーション)、研修であり、訪問介護でもこのルールが適用されます。
ただし、入所系は年2回以上の訓練が必要であるのに対し、訪問系サービスは年1回となっています。ちなみに、訪問系サービスが1年間経過措置を設けられたのには次のような理由があります。
- 小規模事業所が多く、業務過多を避けるため
- 入所系は24時間稼動しているので、業務継続対策が急務であったため
- 訪問介護は利用者ごとに住まいやケア環境が異なり、基準が標準化しにくいため
とはいえ、令和7年度から義務化された以上、「できていない事業所」は運営指導の対象となります。
※参考:厚生労働省 「業務継続に向けた取組の強化等(改定の方向性)|社会保障審議会介護給付費分科会(第232回)」 - 届け出が必要な自治体が多い
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多くの自治体が令和7年4月1日までに届け出るように案内していることが、各ホームページから確認できます。
提出期限までに「基準型」として届け出をしない場合、「減算型」とみなされ基本報酬から減算されますので、自分の事業所の届け出の内容、自治体の案内などを確認しておきましょう。※参考:東京都福祉局「<令和7年4月適用の業務継続計画未策定減算、身体拘束廃止未実施減算に関する届出について>」
- 減算率はどのくらい?
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業務継続計画未策定減算は、「所定単位数の100分の1」、つまり該当月の総報酬の1%が減額される仕組みです。
たった1%と思われがちですが、実際に数字にするとその影響は決して小さくありません。たとえば、1日に1時間未満の身体介護を15件こなすヘルパーが4人いる事業所を想定します。1単位10円、早朝・深夜・定休日の加算なしとすると、1件3,870円のサービスが1日15件、30日で月の収入は1,741,500円。この1%にあたる17,415円が減算となります。
これは、毎月およそ4名分のサービスを“無料提供”しているのと同じ状況です。
事業所にとっては確実な利益減であり、もしスタッフがこの現実を知れば、「頑張っても報酬が減らされている」という不信感につながり、モチベーション低下は避けられないでしょう。
高齢者虐待防止措置未実施減算
高齢者虐待を事業所がおこなっていた場合、指定取り消しの対象となることは当然ですが、日頃の虐待防止の取り組みが不十分であっても減算対応となります。
- 減算要件は厳しめ
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虐待防止対策は次の取り組みをおこなっていれば、「実施している」とみなされます。
- 委員会(虐待防止を検討する委員会)の定期開催
- 虐待防止の指針作成
- 従業員への研修(年1回以上)
- 担当者の配置
一見するとハードルが高く感じますが、担当者を決めて、委員会や研修の年間スケジュールを「指針」として作っておけば、実際の運用はそれほど難しくありません。
とはいえ、全ての措置の一つでも講じられていなければ減算となりますので要注意です。
※参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
- 記録がなければ減算対象に
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委員会の開催や研修については、必ず記録しておくことが重要です。開催日時や参加スタッフ、委員会での協議内容や研修資料は、運営指導で確認できないと開催していないとみなされ、減算となってしまうので必ず記録・保管しておきましょう。
- 減算率はどのくらい?
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高齢者虐待防止措置未実施減算は業務継続計画未策定減算と同じく所定単位数の100分の1に相当する単位数が減算されます。つまり、該当月の総報酬の1%が減算されるため、「わずか」と侮ることはできません。
たとえ1%でも、ほかの減算と重なったり、複数の月にわたって続けば、事業所の運営に大きな影響が出る可能性があります。
「知らなかった」では遅い!要注意の加算
令和6年介護報酬改定で示された訪問介護の減算項目は、どれも「知らなかった」では済まされません。自主点検や運営指導の場で初めて減算要件に気づいたとしても、容赦なく令和6年4月分以降の報酬が丸ごと減算されるケースすらあります。
すべての減算項目を一つひとつ確実に点検し、抜け漏れをゼロにすることが不可欠です。
- 同一建物等居住者へのサービス提供 (“同一建物減算”)
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訪問介護サービスを提供する際、一定割合以上が同一建物等に居住する高齢者である場合、報酬の減算となります。減算の区分も細かく設定しなおされ、前6か月の提供件数ベースで要件に該当すると、減算対象となります。 赤文字が令和6年4月から追加された内容です。

画像:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 なお、減算対象となるのは全ての利用者ではなく、同一建物に居住している利用者のみとなります。
自治体によっては、一定割合数を計算してくれるエクセルシートを掲載しているところがありますので、活用しましょう。
※参考:大阪市「訪問介護、訪問型サービスにおける同一建物減算に係る計算書」
- 共生型訪問介護をおこなう場合
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共生型サービスは、介護保険サービス事業所と障害福祉サービス事業所が一体的・併設的にサービスを提供できる特例制度です。ただし、障害サービスのヘルパーは介護保険の基準に満たないケースがあるので人材の技能・研修水準、サービス提供コストを考慮して、通常の報酬単価の70%となります。
利用者への請求金額やサービス提供の記録、ケアプランとの整合性を今一度確認しておきましょう。
こんな時どうする?(Q&A)
Q1. 管理者として初めて運営指導を受けます。減算にならないか不安です。
減算要件は上記で紹介した通りですが、通常の加算においても算定要件を満たしているか、確認が必要です。
| 点検項目 | 対策ポイント |
| 生活援助中心型が多利用されていないか | ・訪問回数に対して生活援助の割合が過度に高い場合減算 ・特に独居・認知症・複合課題の場合、ケアプランや訪問介護計画書で根拠が説明できるように |
| 訪問介護計画書の未作成、不備はないか | ・記録・モニタリングが規定通り出来ていなければ返還対象 ・令和8年以降LIFEや介護DXの導入にあたり、紙ベースからデータ管理への移行が必要 |
| 認知症介護基礎研修は受講されているか | 令和6年4月1日より無資格者の認知症介護基礎研修の受講は義務化。守らない場合自治体によっては減算対象となる。 ※参考:東京都福祉保健局「認知症介護基礎研修に関するよくあるご質問」 |
| 処遇改善加算、特定処遇改善加算は適切か | 要件を満たさない場合、取得分は全額返還となる。 |
Q2. 高齢者虐待防止措置未実施減算の対象となりました。減算期間はどうなりますか?
大阪府のサイトから引用します。
❝高齢者虐待防止に係る措置を講じていない場合、「事実が生じた月の翌月」から「当該計画に基づく改善(事実が生じた月から3か月後に要報告)が認められた月」までの間、利用者全員について所定単位数から減算する必要があります。❝
※引用:大阪府「虐待防止措置未実施減算の適用期間について」
Q3. 人員基準(サ責や管理者の兼務)に一時的に不足が出たらどうなる?
一時的な不足であればただちに減算にはなりませんが、自治体から改善計画の提出を求められる場合があります。長期化すると基準違反として指定取消にもなりかねないので、急な不足に備え、兼務体制の届出や代替対応できる運営体制の確保が重要です。
まとめ
介護現場では、努力や工夫が加算という形で評価される一方、減算は「見落としや体制の不備」がそのまま事業の収益に影響してしまいます。
減算は、多くの場合「気づけたはずのポイント」を見逃さなければ防げます。仕組みを整え、確認を怠らず、スタッフ全員が同じ方向を向くことで、事業所の成長にもつながります。
そして、減算を防ぐだけでなく、処遇改善加算や特定事業所加算といったプラスの評価もしっかりと獲得していくことが、事業所の安定経営には不可欠です。
ただ、日々の業務に追われる中で、複雑な要件を整理し、適切に運用し続けるのは簡単ではありません。
「要件は理解しているつもりだけど、本当に漏れはないだろうか」 「書類の整備や運用体制に不安がある」
こうした課題を抱える事業所様は少なくありません。
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減算リスクを最小限に抑えながら、加算をしっかり活用して収益を最大化したいとお考えの事業所様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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介護事業所の運営には、加算管理や報酬請求、採用活動など多くの事務作業が発生します。しかし、これらに時間を取られすぎると、肝心の介護サービスの質が低下しかねません。
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