障害福祉サービスを提供する事業所にとって、人手不足は大きな課題です。
新しい人材を確保することはもちろん、現在働いているスタッフの処遇を改善することも欠かせません。
処遇改善加算の活用は、その有効な解決策の一つといえます。
仕組みや要件を正しく理解し、計画的に取り組むことで、職員の働きやすさを高めつつ、事業所の安定的な運営につなげることができます。
本記事では、処遇改善加算の制度の概要や加算算定のポイント、よくある疑問を整理して解説します。
なお、カイビズ編集部では障害福祉サービス向けに処遇改善加算の取得ステップを解説した資料を無料で配信しています。
収益を向上させ、事業所運営を安定させたいと考えている方にぜひ読んでいただきたい資料ですので、以下からダウンロードして内容をご確認ください。
居宅介護・重度訪問介護向け 2026年度処遇改善加算取得マニュアル

障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護)において、処遇改善加算を取得する必要な要件や加算率などを、2026年度の臨時改定を踏まえてわかりやすくまとめています。
これから取得する事業所は要件を正しく理解するために、そして、すでに取得済みの事業所はセルフチェックなどにご活用ください。
障害福祉サービスと居宅介護の制度概要
障害福祉の仕組みは「障害福祉サービス」と「地域生活支援事業」に分かれます。
障害福祉サービスは、障害の程度や生活環境に応じて個別に支給が決定され、介護を中心とした「介護給付」と、就労・訓練などの「訓練等給付」に区分されます。
サービスには利用期限がある場合もありますが、必要性が認められれば更新も可能で、継続的な生活支援を受けられる仕組みになっています。
- 居宅介護の内容と特性
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障害福祉サービスは障害者総合支援法に基づき、身体・知的・精神など幅広い障害を対象に、介護給付や訓練等給付を通じて自立した生活を支える仕組みとなっています。
なかでも居宅介護は、自宅での入浴や排泄、食事などの身体介護に加え、調理や掃除などの家事援助、通院介助まで担い、日常生活を包括的に支援します。在宅で暮らす障害者にとって最も生活に密着したサービスとされ、地域での自立生活や社会参加を後押しする重要な役割を果たしています。利用者の障害特性や生活状況に応じて柔軟にサービスを組み立てられる点も大きな特徴です。
※参考:厚生労働省「障害福祉サービスについて」
- 介護保険制度との違い
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介護保険制度の中には「居宅介護支援」というサービスがあり、居宅介護と名称は似ていますが、内容は全く異なります。
介護保険における居宅介護支援は、要介護高齢者を対象に、ケアマネジャーがケアプランを作成し、必要な介護サービスを調整する「計画支援」が中心です。
一方、障害福祉サービスの居宅介護は、障害のある人の自宅をヘルパーが訪問して、身体介護や家事援助を直接行う「生活支援」が主な内容です。
つまり、介護保険はサービスの調整役、障害福祉は生活支援サービスを提供する点に大きな違いがあります。
処遇改善加算に期待されること
高齢者・障害者を介護する福祉業界は現在深刻な人手不足に直面しています。
その要因の一つとして考えられるのは、他の産業と比べて給与水準が低いことであり、処遇改善はその打開策として期待されています。
- なぜ処遇改善が必要か
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独立行政法人福祉医療機構が2023年度に実施した全国調査によると、障害福祉事業所の52.6%が「職員が不足している」と回答しています。

画像:独立行政法人福祉医療機構「2023年度障害福祉サービス等の人材確保に関する調査結果」を参考に編集部作成 このデータからもわかるように、人材確保・定着策・労働環境の強化は待ったなしの状況です。
- 福祉・介護職員等処遇改善加算の要件
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国は障害福祉事業所が令和6年度に「福祉・介護職員等処遇改善加算」を通じて、処遇改善加算の一本化や加算率の引上げを行いました。
令和8年度の改正では上乗せ要件も含めて加算の区分と加算要件を見直し、より手厚い賃上げの実現を目指しています。加算要件は下の表のとおりとなっています。

図:厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」より引用
処遇改善加算改正はここがポイント
国は制度改正を重ね、令和8年6月からは加算率の引上げや対象職種の拡大、加算区分の見直しを行っています。
こうした流れを踏まえると、事業所が安定的に人材を確保し、質の高いサービスを持続するためには、処遇改善加算の取得と適切な運用が欠かせません。
この章では、最新の動向について具体的に紹介していきます。
- 令和8年6月改定のポイント
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今回の改正では、まず福祉・介護職員等処遇改善加算の対象が、福祉・介護職員のみから障害福祉従事者へと拡大されました。これにより、従来よりも広い職種を視野に入れた処遇改善が可能になっています。また、2026年6月からは加算率の引上げも行われ、障害福祉分野全体で賃上げを後押しする仕組みが強化されました。
さらに、加算区分も見直され、従来の整理に加えてⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳという構成になりました。とくにⅠロ・Ⅱロは、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分として位置づけられており、単に加算率が上がっただけでなく、現場の業務改善に取り組む事業所を評価する設計になっています。
要件面では、月額賃金改善、職場環境等、キャリアパスの整備が引き続き重要ですが、令和8年度中については、一部の要件は年度内に対応することを誓約することで算定可能とされています。制度移行を円滑にするための配慮措置が設けられている点も、今回の改正の大きなポイントです。
詳細は以下の記事で説明していますので、併せてご確認ください。
【最新版】令和8年度介護報酬の臨時改定とは?訪問介護事業所が押さえるべきポイントと準備 – 介護事業所の…この記事では、2026年度の臨時の介護報酬改定について現時点で厚生労働省の資料で示されている内容をもとに、背景や目的、改定のポイント、事業者が備…カイビズ –
- 「職場環境等要件」は事業所にあった内容が大事
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処遇改善加算の職場環境等要件は、加算区分ごとに必要な取組数が定められています。
ここでは、障害サービスの「居宅介護」を想定して、実務での取り組み例を紹介します。加算取得のために新しい試みをする前に、既存の取り組みが該当するかを確認しましょう。
なお、区分の一部を抜粋した例ですので、詳細は参考資料をご確認ください。区分 取り組み例 メリット・効果 キャリアアップ支援 資格取得支援
職員面談専門性強化
職場定着生産性向上 タブレットによる記録
勤怠管理にICT導入情報共有の効率化
業務負担軽減健康管理 メンタルヘルス相談窓口設置
腰痛対策身体・精神面負担軽減 表:厚生労働省「処遇改善加算等について」を元に編集部で作成 - 令和8年度中は、一定の要件について対応を誓約することで算定可能
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国は、処遇改善加算について、一定の要件は令和8年度中の対応を誓約することで算定可能としています。
本来は職場環境等要件の充実やキャリアパス要件(賃金体系整備、研修実施、昇給の仕組み)の整備が必要ですが、取得率が低迷している現状を踏まえ、移行を円滑にするため猶予が与えられたことになります。
さらに、「障害福祉人材確保・職場環境改善等事業」など、職場環境改善や生産性向上に関する支援策も示されています。
- 補助金との連動・生産性向上施策
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国は賃上げを支える補助金制度を処遇改善加算と連動させ、職員の安定的な待遇確保を後押ししています。
さらに、ICT導入や業務効率化を含む生産性向上の取組が進められており、現場の負担軽減や人材確保・定着への効果が期待されています。
Q&A|処遇改善加算と支援策に関する疑問
ここからは、処遇改善加算に関するよくある質問について紹介します。
Q1. 処遇改善加算と障害福祉人材確保・職場環境改善等事業の関係は?
処遇改善加算は人件費の改善が目的であるのに対し、障害福祉人材確保・職場環境改善等事業は働きやすい職場づくりが目的です。
双方を組み合わせることで、「給与面」と「職場環境面」の両方から処遇改善が可能となりますので、積極的に取りに行きたいところです。
※参考:厚生労働省「『障害福祉人材確保・職場環境改善等事業』のご案内」
Q2. 賃金改善の対象者は?
処遇改善加算による賃金改善は、福祉・介護職員を基本対象として、経験や技能が高いスタッフを優先しつつ柔軟な配分が認められています。処遇改善加算による賃金改善の対象は、福祉・介護職員のみならず、事業所の運営に関わる障害福祉従事者に広がっています。
ただし、一部の職員に偏った配分や、まったく事業に関わっていない職員への配分は認められません。
なお、上位区分の算定では、経験・技能のある職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金額が年額460万円以上であることなどが要件となります。
Q3. 賃上げにより、事業所にはどのようなメリットが期待できますか?
処遇改善や働きやすい職場になることで、人材の定着が期待できます。
その他には賃上げに充当した分が「賃上げ促進税制」による税額控除の対象となります。
スタッフ数が1000人以下の事業所などでは、全体の給与が1.5%増で最大30%、2.5%増で最大45%を法人税等から控除可能となります。未控除分の繰越も可能になるので、長期的な財務計画にも柔軟に対応できます。
※参考:厚生労働省「介護現場における賃上げ促進税制の活用に係るリーフレット」
まとめ
障害福祉サービス事業所にとって処遇改善は人材確保と定着の鍵であり、質の高い支援を継続する基盤となります。
処遇改善加算を計画的に取得・活用することに加え、補助金や税制優遇を併用することで、給与改善と職場環境整備を両立できます。
また、ICT導入など生産性向上施策も取り入れれば、職員の負担軽減とサービスの質向上が期待でき、持続可能な運営体制の確立につながるでしょう。
一方で、加算取得には複雑な要件の整理や書類作成、職員体制の管理といった実務的なハードルがあるのも事実です。特に多忙な訪問介護事業所では、「時間がない」「手続きが難しい」といった声も多く聞かれます。
そうした場合は、加算取得の実務を支援する専門サービスを活用するのも一つの手段です。
カイビズでは、事業所ごとの体制分析から、必要な整備・届出支援、運用管理のフォローまで、処遇改善加算の取得と維持を支援しています。
専門家の力を借りて確実な加算取得と持続可能な体制整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。
処遇改善加算の取得をサポート! カイビズアシスト –加算コンサルティングサービス

介護事業所の運営には、加算管理や報酬請求、採用活動など多くの事務作業が発生します。しかし、これらに時間を取られすぎると、肝心の介護サービスの質が低下しかねません。
「カイビズ アシスト」 は、介護事業所の処遇改加算の取得・運用をサポートするサービスです。加算の取得までのフォローだけでなく効率的な運用方法など処遇改善加算に関する手続きをまるっとフォローいたします。
この記事の監修者
カイビズ編集部

重度訪問介護など自社で運営してきた実績をもとに、介護現場での課題に即した情報発信を行っています。
加算取得支援、報酬請求代行、採用代行など、介護・障害福祉分野の経営支援に特化したノウハウを有しており、制度改定や実務に関する最新情報をわかりやすく解説しています。
