処遇改善加算を算定している訪問介護事業所では、年度末の実績報告書を作成する段階になって、「加算額と支給額が合わない」「職員ごとの配分根拠が説明できない」と慌てるケースがあります。
処遇改善加算は、算定した加算額を職員の賃金改善に充てる制度です。単に毎月手当を支給していればよいわけではなく、誰に、どの基準で、いくら配分したのかを説明できる状態にしておく必要があります。
特に訪問介護では、職員の役割や勤務形態がさまざまです。さらに2026年度は、4月・5月と6月以降で区分・加算率が変わるため、実績報告を見据えた設計が重要です。
なお、カイビズでは処遇改善加算取得に向けてのステップを解説した資料も用意しております。処遇改善加算を取得する必要な要件や加算率などを、2026年度の臨時改定を踏まえてわかりやすくまとめています。
これから取得する事業所は要件を正しく理解するために、そして、すでに取得済みの事業所はセルフチェックなどにご活用ください。
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処遇改善加算における配分ルールの基本要件
処遇改善加算の配分ルールで最も重要なのは、加算額以上の賃金改善を行うことです。
厚生労働省Q&Aでは、賃金改善額が加算額を下回った場合について、次のように示されています。
処遇改善加算の算定要件は、賃金改善額が加算額以上となることであることから、賃金改善額が加算額を下回った場合、算定要件を満たさないものとして、加算の返還の対象となる。
※参照:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-9より
つまり、加算額に対して賃金改善額が不足すると、返還リスクが生じます。ただし、同Q&Aでは、不足分を賞与等の一時金として追加配分することで、返還を求めない取扱いも示されています。
また、処遇改善加算は「介護職員その他の職員」の賃金改善に充てるものです。賃金改善には、基本給、手当、賞与等が含まれますが、退職手当は除かれ、法定福利費等の事業主負担分は含めることができます。
そのため、訪問介護事業所が押さえるべき基本要件は次の3つです。
- 加算額以上の賃金改善を行うこと
- 賃金改善の対象となる費用を正しく整理すること
- 実績報告で説明できる配分根拠を残すこと
処遇改善手当を増やす代わりに別の手当を減らす、賞与を減らして帳尻を合わせるといった運用は避けなければいけません。
また、年度末に一時金でまとめて調整する設計に偏ると、月額賃金改善要件との整合性が問題になる可能性もあります。
2026年6月改定で変わる訪問介護の加算率
訪問介護では、2026年4月・5月と6月以降で処遇改善加算の加算率が変わります。
| 区分 | 2026年4月・5月 | 2026年6月以降 |
|---|---|---|
| 加算Ⅰ | 24.5% | Ⅰイ:27.0% |
| Ⅰロ:28.7% | ||
| 加算Ⅱ | 22.4% | Ⅱイ:24.9% |
| Ⅱロ:26.6% | ||
| 加算Ⅲ | 18.2% | 20.7% |
| 加算Ⅳ | 14.5% | 17.0% |
2026年度は、年間の加算見込額を12か月同じ加算率で計算することはできません。4月・5月分と6月以降分を分けて試算し、どの程度の加算収入が見込まれるかを把握する必要があります。
特に6月以降は、加算Ⅰ・Ⅱがそれぞれ「イ」「ロ」に分かれます。どの区分を算定するかによって配分原資が変わるため、従来どおりの支給を続けると、年度末に賃金改善額が不足する可能性があります。
配分には裁量があるが、偏りすぎは認められない
2026年改定では、処遇改善加算の対象が、介護職員のみから介護従事者へ拡大されています。訪問介護事業所では、訪問介護員や登録ヘルパーだけでなく、サービス提供責任者、管理者、事務職員、兼務職員なども配分対象として検討されます。
一方で、対象者が広がったからといって、自由に配分してよいわけではありません。厚生労働省Q&Aでも、事業所内での柔軟な配分を認める考え方が示されています。また、事業所内での配分対象には「介護職員以外の全職種」が含まれるとされています。
処遇改善加算の各事業所内における配分については、問2-1にあるとおり、事業所内で柔軟な配分を認めることとしており、対象には介護職員以外の全職種(※)が含まれる
※参照:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問2-1-2より
ただし、問2-6では、次のように注意されています。
一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと。
※参照:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問2-6より
つまり、訪問介護事業所には一定の裁量がありますが、職務内容や勤務実態に照らして説明できることが前提条件です。管理者、事務職員などに配分する場合も、勤務時間、サービス提供時間、職責、兼務割合などを踏まえ、根拠を整理しておく必要があります。
法人本部の職員についても、処遇改善加算の算定対象となる訪問介護事業所の業務を行っていると判断できる場合は、賃金改善の対象に含めることができます。一方で、加算を算定していない事業所や、加算対象外サービス、介護保険外サービスの職員は、処遇改善加算を原資とする賃金改善の対象には含められません。
実績報告で問題になりやすい「どんぶり勘定」のリスク
処遇改善加算をどんぶり勘定で配分すると、次のようなリスクがあります。
- 加算額と支給額の対応関係が分からなくなる
- 職員ごとの配分根拠を説明できなくなる
- 対象者拡大を誤解し、説明できない配分をしてしまう
- 年度末に追加支給や修正対応が集中する
たとえば、「常勤職員には毎月一定額を支給し、登録ヘルパーには年度末に余った分を配る」といった運用では、加算額と賃金改善額の対応関係が分かりにくくなります。
訪問介護では職員ごとの勤務時間やサービス提供時間に差があるため、配分基準がないと金額差を説明できません。年度末に不足が判明すると、追加支給、給与計算、職員説明、実績報告書の作成が一気に発生します。
実績報告を見据えた事前の配分設計
実績報告をスムーズに作成するために、事前の配分設計で注意すべき点は次の5つです。
- 年間の加算見込額を期間別に試算する
- 配分対象者を職員区分ごとに整理する
- 配分基準を明文化する
- 月額支給部分と調整部分を分ける
- 給与台帳や規程などの証跡を残す
2026年度の訪問介護では、4月・5月と6月以降で加算率が変わるため、年間の加算見込額を一括で計算するのではなく、期間を分けて試算する必要があります。月ごとの総単位数も、利用者数やサービス提供回数、キャンセル、登録ヘルパーの稼働状況によって変動しやすいため、「加算見込額」「支給予定額」「支給実績」「差額」を月次で管理しておくと安心です。
配分対象者については、職員ごとに、処遇改善加算を算定している訪問介護事業所の業務をどの程度行っているかを確認します。特に事務職員や法人本部職員については、その業務が訪問介護事業所の事務なのか、別事業所の事務なのか、法人全体の事務なのかを整理し、複数業務を兼務している場合は業務割合を明確にしておくことが重要です。
配分基準としては、勤務時間、サービス提供時間、職責、資格、経験年数、評価などが考えられます。たとえば、登録ヘルパーについてはサービス提供時間に応じて配分し、サービス提供責任者や管理者については職責や業務割合を踏まえて配分するなど、職員区分ごとの考え方を整理しておくと、実績報告時にも説明しやすくなります。
また、毎月支給する部分と、加算収入に応じて調整する部分を分けると、過不足を管理しやすくなります。給与台帳、給与明細、就業規則、賃金規程、職員への周知資料などの証跡も残しておきましょう。処遇改善加算の配分ルールは、計算上合っているだけでなく、後から確認できる資料が残っていることが重要です。
処遇改善加算の配分で押さえる計算のポイント
処遇改善加算の計算では、次の3点を押さえます。
- 加算額は総単位数と加算率をもとに把握する
- 法定福利費等の事業主負担増加分も含めて管理する
- 前年度から増えた加算額は、新たな賃金改善として整理する
処遇改善加算では、年度を通じて加算額以上の賃金改善を行っているかが重要です。そのため、月ごとの支給額だけで判断するのではなく、年度累計で「加算見込額」と「賃金改善額」を照合できるようにしておく必要があります。
特に訪問介護では、利用者数やサービス提供回数、登録ヘルパーの稼働状況によって月ごとの総単位数が変動します。予定よりサービス提供量が増えれば加算額も増えるため、当初の支給予定額のままでは、年度末に賃金改善額が不足する可能性があります。
また、見落としやすいのが法定福利費等の事業主負担分です。処遇改善加算によって給与や手当を増やした場合、それに伴って社会保険料等の事業主負担も増加します。この増加分は賃金改善額に含められるため、職員へ直接支給した金額だけでなく、法定福利費等を含めた賃金改善額として管理しましょう。
さらに、2026年度の改定によって前年度より加算額が増える場合は、その増加分について新たな賃金改善として見直しをする必要があります。前年と同じ金額を同じ職員に支給し続けるだけでは、増加した加算額の基準を満たさない可能性があります。
不足が見込まれる場合は、年度末を待たずに、毎月の手当額の見直しや一時金での追加配分を検討することが重要です。
よくある質問
Q1. 訪問介護員以外にも配分できますか?
訪問介護事業所の業務に従事している実態があれば、サービス提供責任者、管理者、事務職員なども配分対象として検討できます。ただし、訪問介護業務との関係や兼務割合を説明できることが前提です。
Q2. 登録ヘルパーにも配分する必要がありますか?
登録ヘルパーも訪問介護サービスに従事する職員であるため、配分対象として整理する必要があります。サービス提供時間や勤務実績に応じた配分基準を設けると、説明しやすくなります。
Q3. 支給額が加算算定額を下回った場合はどうなりますか?
処遇改善加算は、賃金改善額が加算額以上であることが算定要件です。不足が見込まれる場合は、早めに追加支給や一時金での調整を検討しましょう。
まとめ|実績報告で慌てないために
処遇改善加算の配分ルールは、年度末の実績報告で、加算額以上の賃金改善を行ったことや、配分対象者・配分額に合理的な根拠があることを説明するための設計です。
カイビズの加算コンサルティングでは、処遇改善加算の配分設計から、加算見込額の試算、対象者や配分基準の整理、月額賃金改善要件の確認、年度末の実績報告書作成フォローまでトータルで支援しています。
「自社の配分ルールで問題ないか分からない」「2026年6月改定後の加算率で正しく計算できているか不安」と感じている場合は、年度末の実績報告で慌てないためにも、早めにカイビズへご相談ください。
処遇改善加算の取得をサポート! カイビズアシスト –加算コンサルティングサービス

介護事業所の運営には、加算管理や報酬請求、採用活動など多くの事務作業が発生します。しかし、これらに時間を取られすぎると、肝心の介護サービスの質が低下しかねません。
「カイビズ アシスト」 は、介護事業所の処遇改加算の取得・運用をサポートするサービスです。加算の取得までのフォローだけでなく効率的な運用方法など処遇改善加算に関する手続きをまるっとフォローいたします。
