2026年10月1日から、すべての事業主にカスタマーハラスメント対策が義務付けられます。訪問介護事業所も例外ではありません。
訪問介護は、職員が利用者宅で1対1になりやすいサービスです。職員個人の我慢に任せず、事業所として現場を守る仕組みを整える必要があります。
そこで、この記事では、2026年の法改正に伴う訪問介護事業所向けの「カスハラ対策義務化」の概要から、事業所が今すぐ取り組むべき具体的な対策を分かりやすく解説します。
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訪問介護でカスハラ対策が急がれる背景
カスタマーハラスメントが社会問題化していることを受け、2025年6月に労働施策総合推進法等が改正され、2026年10月1日からカスハラ防止措置が事業主の義務になります。訪問介護事業所も対応が必要です。
※参照:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
介護分野でも対策強化が進んでいます。2026年6月の参議院・厚生労働委員会では、厚生労働省老健局長が、カスハラから介護従事者を守る対策をすべての介護事業者に義務付ける方針を改めて示しました。今後は、運営基準への位置付けも検討されます。

背景には、在宅介護従事者の安全確保をめぐる問題があります。埼玉県川口市では、ケアマネジャーが利用者宅で殺害される事件が発生し、介護現場には大きな衝撃が走りました。厚生労働省は事件を受け、在宅介護従事者の安全確保を徹底するよう通知しています。
訪問介護のカスハラ対策は、単なる法改正への対応だけではありません。職員の安全とサービス提供を守る重要な経営課題への対応です。
カスハラとは
カスハラとは、利用者や家族などからの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超え、職員の就業環境を害するものです。
苦情や要望をすべてカスハラとみなすわけではありません。サービス内容への質問、改善を求める意見、通常の苦情は、カスハラとは区別されます。
一方で、暴力、暴言、脅し、長時間の拘束、契約外サービスの強要、性的な言動などは、カスハラにあたる可能性があります。判断のポイントは、内容や伝え方が社会通念上の範囲を超え、職員が安心して働けない状態になっているかです。
訪問介護で起こりやすいカスハラの具体例
訪問介護では、利用者宅という閉じた環境でサービスを提供します。周囲が気づきにくく、職員が一人で抱え込みやすい特徴があります。
身体的なハラスメントには、職員を叩く、蹴る、物を投げる、腕をつかむ、進路をふさぐといった行為があります。大きなけががなくても軽視できません。
精神的なハラスメントには、大声で怒鳴る、人格を否定する、執拗に謝罪を求める、長時間帰らせない、契約にない掃除や買い物を強く求めるといった行為があります。「前のヘルパーはやってくれた」「事業所を変えるぞ」などと威圧されるケースもあります。
性的なハラスメントにも注意が必要です。身体に触れる、性的な発言をする、交際を迫るといった行為です。

厚生労働省は「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」で、利用者や家族等によるハラスメントの実態と、介護事業者が取り組むべき対策を示しています。訪問介護事業所は、このマニュアルをもとに対応ルールを整備する必要があります。
カスハラを放置する経営リスク
カスハラを放置すると、職員の心身に大きな負担がかかります。不安を感じる状態が続けば、休職や離職につながります。職員を守れない事業所は、採用や定着でも不利になります。
対応が遅れると、利用者・家族との関係悪化、ケアマネジャーとの連携悪化、スタッフ間の事業所に対する不信感にもつながります。
法改正後は、相談体制、対応マニュアル、研修、記録の仕組みがあるかどうかが重要になります。何も整備していない状態は、事業運営上、大きなリスクとなります。
訪問介護事業所が今すぐ取り組むべき対策
まず、事業所として「ハラスメントを許さない」という方針を明確にします。利用者や家族にも伝わるよう、重要事項説明書や契約時の説明に盛り込むことが重要です。
次に、相談体制を整備します。誰に報告するのか、緊急時はどこへ連絡するのか、報告後に管理者が何を確認するのかを決めておきます。報告後は、事実確認、訪問体制の見直し、ケアマネジャーや家族、関係機関との調整につなげます。
対応マニュアルも必要です。暴言、身体的な危険、性的な言動、契約外サービスの強要など、場面ごとの対応を決めます。退室の判断基準や緊急連絡の方法も明確にします。

厚生労働省のマニュアルでは、訪問介護等の実践例として、同じ訪問介護員が入り続けないこと、職員の個人情報を利用者に話さないこと、新規利用者の事前情報を得て担当職員とのマッチングを丁寧に行うことなどが示されています。
リスクが高いケースでは、複数人訪問、管理者の同行、担当者変更、サービス内容の再説明も検討します。必要に応じて、行政や警察など外部機関へ相談します。また、補助者同行支援などの経費助成も制度化されています。
記録と共有が職員と事業所を守る
訪問介護のカスハラ対策では、記録と共有が欠かせません。暴言を受けた、威圧的な態度があった、契約外サービスを求められた、身の危険を感じた。まだ小さな火種の段階でも記録に残す必要があります。
記録がなければ、管理者は現場で何が起きたのかを正確に把握できません。いつ、誰が、どのような言動を受けたのかが曖昧だと、利用者・家族への説明や、ケアマネジャーとの共有、訪問体制の見直しが難しくなります。
記録は、裁判や紛争になった場合に、事業所が適切に対応していたことを示す証拠にもなります。報告、事実確認、対応の経緯が残っていれば、事業所自身を守る材料になります。
記録は、職員を疑うためのものではありません。職員と事業所を守る根拠です。
よくある質問
Q1.どこからがカスハラになりますか?
正当な苦情や要望はカスハラではありません。暴力、暴言、脅し、長時間の拘束、契約外サービスの強要、性的な言動など、社会通念上許容される範囲を超え、職員の就業環境を害する言動はカスハラにあたる可能性があります。
Q2.認知症の利用者による言動も対象になりますか?
認知症の症状による言動は、本人の状態を踏まえて慎重に判断します。ただし、職員の安全が脅かされる場合は放置できません。記録を残し、家族、ケアマネジャー、医療職、行政と連携します。
Q3.義務違反時のペナルティはありますか?
改正法上、カスハラ対策義務に違反した場合の直接的な罰則はありません。ただし、厚生労働大臣による助言、指導、勧告の対象になる可能性があります。勧告に従わない場合は、企業名公表の対象になる可能性もあります。
まとめ:訪問介護のカスハラ対策は記録から始まる
2026年10月から、カスハラ対策はすべての事業主に義務付けられます。訪問介護事業所では、職員の安全を守るためにも、方針、相談体制、マニュアル、研修、記録共有の仕組みが必要です。
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職員の違和感やリスクを管理者が早期に把握できれば、カスハラの深刻化を防ぎやすくなります。
ハラスメント対策に不安がある訪問介護事業所は、規程やマニュアルの整備とあわせて、現場の記録共有の仕組みを見直しましょう。
