訪問介護事業所を立ち上げるためには、費用や手順などについて具体的な計画を立てておく必要があります。
とはいっても立ち上げの経験がなければ申請先や相談内容すら分からないのではないでしょうか。
この記事では人員配置や具体的な準備の内容、立ち上げに失敗しないポイントなどを紹介します。
なお、カイビズ編集部では障害福祉サービス向けに処遇改善加算の取得ステップを解説した資料を無料で配信しています。
収益を向上させ、事業所運営を安定させたいと考えている方にぜひ読んでいただきたい資料ですので、以下からダウンロードして内容をご確認ください。
障害福祉サービス向け 2024年度処遇改善加算取得マニュアル

この資料では、障害福祉サービス(重度訪問介護や居宅介護)において、処遇改善加算を取得する必要な要件や加算率などを、ポイントを整理してわかりやすくまとめています。
処遇改善加算の制度は、2024年度(令和6年度)に改定され、今まで3種類あったものが1本化され、加算率も変更されています。
これから取得する事業所は要件を正しく理解するために、そして、すでに取得済みの事業所はセルフチェックなどにご活用ください。
人員体制を整える
訪問介護の運営では、国があらかじめ具体的な要件を定めています。
主に、人員配置や設備に関する基準が中心です。分かりやすいように表でまとめてみました。
| 基準項目 | 要件・内容 |
| 管理者 | ・訪問介護事業を統括管理 ・一日8時間訪問介護の業務だけに従事する |
| サービス提供責任者 | ・ヘルパーをまとめ、サービスの質を管理 ・利用者の相談や苦情対応、ヘルパーの訪問スケジュールや支援計画を立てる |
| 訪問介護員 | ・常勤換算(全ての職員が働いている時間を合計して、フルタイム職員に置き換えなおすこと)で計算。 ・訪問介護の場合、2.5人必要 |
事務所と設備の準備
- 設備基準
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訪問介護といえば、利用者の自宅で介護をするので、事務所や設備については特に決まりがないと思いがちです。
しかし、記録や感染予防のための備品、書類などを管理するためのスペースやルールが必要です。基準項目 要件・内容 設備及び備品等 ・事業の運営をおこなうために必要な広さを有する専用の区画(利用申込の受付、相談等に対応できるもの)
・訪問介護の提供に必要な設備及び備品を備え付けている - 具体的な準備
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以下の備品は実務をおこなう上で整えておくとよいものを具体的にあげました。例えば次のようなものです。
項目 ポイント 事務デスク 部屋の広さやスタッフの数も考えて、一人用、折り畳みタイプ、複数人で共用するデスクなどを選びましょう。 電話・FAX 固定電話、FAXなど通信機器は必要です。スタッフの数や運営時間を考えて携帯電話や転送機能も検討しましょう。 パソコン 書類や記録管理だけでなく、メールやオンライン研修など様々な用途があります。また印刷機器やWifiなどネット環境も必要です。 相談対応スペース 来所者の相談に対応する場所は必要です。相談内容が個人のプライバシーにかかわったり、守秘義務に配慮したりするために、相談しやすい環境を検討しましょう。 移動手段 移動手段として車やバイク、自転車等が必要です。保管場所や定期的点検はもちろん、損害保険の加入など維持費用が掛かってきます。事業エリアやスタッフ数、地域の状況などを考えて用意しましょう。
予算と資金計画
- 初期投資の目安
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訪問介護は在宅系サービスの中では比較的低コストですが、最初は利用者が少なく赤字になるリスクがあります。
そのため初期投資や運転資金がどれくらいかかるか資金計画を立てておくことが大切です。
以下は3人規模の訪問介護を立ち上げる際の目安です。初期投資としておよそ500万円程度必要となります。- 人件費3ヶ月×3人:270万(介護報酬は翌々月の支払いとなるため、人件費は3ヶ月分用意)
- 備品購入費:50万(パソコン、消耗品、事務用品)
- 移動関連費:100万(車両、保険)
- 設備維持費費:60万 (事務所賃料・光熱水費・保証金)
- 登録免許税(法人設立時):6万(合同会社)~15万(株式会社)
- 申請関係(印紙、手数料、書類作成代行費用など):5~10万
- 運転資金の確保
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事業開始後は、運転資金が発生していきます。いわゆる箱、人、物に経費がかかってきますので、月単位でどのくらいが必要か計算しましょう。
以下は経費一例です。- 人件費
- 設備維持費費(事務所賃料・光熱水費・保証金)
- 損害賠償保険、労災保険、通信費
- 移動関連費(燃料、駐車代)
- 金融機関の融資や助成金制度の活用
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自己資金だけでまかなうのは難しいため、金融機関からの融資を活用するケースが多くあります。
「新規開業支援資金」は、新しく事業を始める方や開業7年以内の事業者を対象に、設備・運転資金ともに利用が可能です。原則無担保・無保証人での融資で、2024年4月より自己資金要件が撤廃された点が特徴です。
また、国や都道府県において介護人材の確保やICT導入を支援する補助金・助成金制度が設けられていますので、介護ソフトやIT導入にかかるコストを抑えたい方にはおすすめです。※参考:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
指定申請と運営の流れ
訪問介護事業を始めるには、法人設立から申請手続き、行政から指定を受けて事業開始まで、一連の流れを理解することが不可欠です。
法人取得まで約1ヶ月、申請から指定を含めるとおおよそ5ヶ月かかるため、余裕を持った準備が重要です。
この章では、法人設立や申請準備、経営戦略の立案、開始後の対応まで、段階ごとに押さえておきたいポイントを解説します。
- ①まずは法人設立から
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訪問介護事業を始めるには、まず法人格の取得が必須です。個人事業主では指定申請ができないため、合同会社や株式会社での立ち上げが一般的といえるでしょう。
設立後は税務署や年金事務所などへの届出も必要になります。法人化は手続きが多いですが、金融機関からの融資や行政への信頼性確保にもつながり、事業基盤を安定させる第一歩といえるでしょう。
- ②申請手続きの準備
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法人を設立したら、次に行政への指定申請手続きに進みます。その際には、前章で紹介した人員・設備要件を満たしておくことが条件です。
さらに、運営規程や勤務体制表、資金計画などの書類も整えておきましょう。書類は不備があると申請が差し戻されるため、行政の指定申請要綱を確認しながら慎重に進めることが大切です。
- ③経営戦略のポイントは処遇改善加算・特定事業所加算
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訪問介護事業を軌道に乗せるには、指定申請と並行して経営戦略を策定することが欠かせません。
地域の高齢化率や競合の状況、利用者ニーズを調査し、自社の強みを明確に打ち出す必要があります。
差別化の例として、処遇改善加算や特定事業所加算を取得して職員の待遇に力を入れていることを示すことが有効です。採用・育成計画や収支シミュレーションも含め、戦略的に準備することで、長期的に持続可能な事業運営が可能になります。 - ④事業開始後の留意点
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新規で訪問介護の指定を受けた場合、一般的に事業開始から1年以内に行政担当者による運営指導が行われます。
指導では「計画が予定通り進んでいるか」「サービスの質が保たれているか」などが確認されます。管理者やサービス提供責任者、訪問介護員はそれぞれの役割で協力し合い、安定した事業経営と働きやすい職場づくりを目指すことが求められます。
訪問介護立ち上げによくあるQ&A
Q1.利用者をうまく集めるコツは?
A. 訪問介護のニーズを把握する上で、地域包括支援センターは非常に頼りになる存在です。
行政やケアマネジャー、地域住民と日常的に連携しているため、最新のサービス資源や利用者ニーズの情報を持っています。中学校区ごとに設置されているため、事業実施地域をまだ決めかねている場合は、直接訪問して情報収集することをおすすめします。また、要支援者のマネジメントも行っているため、条件が合えば利用者の紹介につながる可能性もあります。
Q2. 訪問介護事業所を立ち上げる際に失敗しないための手順は?
A. 申請前から行政に相談へ出向くことで、手順の確認はもちろん、地域情報などを収集しておくことで立ち上げ失敗のリスクを減らせます。
所定の用紙はどれか、関係機関がどこにあるか、知っておくだけで後々役に立ちます。可能であれば早めに名刺を交換し、申請担当者と顔なじみになることで相談しやすい関係を築くこともポイントです。
※参考:東京福祉局「1 訪問介護(新規に指定を受けたい方へ)」
Q. 介護保険の訪問介護の指定を既に受けていますが、共生型サービスを提供するためには別に指定が必要ですか?
A. はい、必要です。
「共生型サービス」とは、障害のある方が65歳を過ぎても、同じ事業所で支援を続けられるように設けられた制度です。障害福祉サービスを使っていた利用者にとっては途切れない支援がメリットといえます。すでに介護保険の指定を持つ事業所が共生型サービスを行う場合は、障害福祉サービスの指定を別途受ける必要があります。
※参考:東京福祉局「訪問介護 共生型サービスの指定について」
まとめ
訪問介護事業の立ち上げは、事業運営全般の中でも特に時間と労力を要する重要なステップです。
指定申請の準備から実際の開業、その後の運営まで、各段階で押さえるべきポイントを理解しておくことが、スムーズな事業運営につながります。
事前の計画と準備を丁寧に行い、地域ニーズや人材確保、運営体制を整えることで、安定した事業運営と利用者の信頼獲得を目指しましょう。
事業所運営を軌道に乗せるためには、処遇改善加算や特定事業所加算など各種加算を取得することも大切です。
一方で、加算取得には複雑な要件の整理や書類作成、職員体制の管理といった実務的なハードルがあるのも事実です。特に多忙な訪問介護事業所では、「時間がない」「手続きが難しい」といった声も多く聞かれます。
そうした場合は、加算取得の実務を支援する専門サービスを活用するのも一つの手段です。
カイビズでは、事業所ごとの体制分析から、必要な整備・届出支援、運用管理のフォローまで、処遇改善加算の取得と維持を支援しています。
専門家の力を借りて確実な加算取得と持続可能な体制整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。
処遇改善加算の取得をサポート! カイビズアシスト –加算コンサルティングサービス

介護事業所の運営には、加算管理や報酬請求、採用活動など多くの事務作業が発生します。しかし、これらに時間を取られすぎると、肝心の介護サービスの質が低下しかねません。
「カイビズ アシスト」 は、介護事業所の処遇改加算の取得・運用をサポートするサービスです。加算の取得までのフォローだけでなく効率的な運用方法など処遇改善加算に関する手続きをまるっとフォローいたします。
この記事の監修者
カイビズ編集部

重度訪問介護など自社で運営してきた実績をもとに、介護現場での課題に即した情報発信を行っています。
加算取得支援、報酬請求代行、採用代行など、介護・障害福祉分野の経営支援に特化したノウハウを有しており、制度改定や実務に関する最新情報をわかりやすく解説しています。
