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介護事業を譲渡・継承?閉業する前に知っておくべき、大切なこと

介護保険が施行され、四半世紀(25年)が過ぎました。一代で経営をうまく軌道に乗せ、事業を成功させた介護事業所のオーナー様も多くいらっしゃいます。

そして、介護業界の成熟度も増しています。全国的な社会の仕組みとして介護が受けられるようになったことは、喜ぶべきことです。一方、成熟の時間は新たな課題も生み出しました。タイトルのとおり介護事業の「事業継承」という問題です。

介護事業は閉業する場合でも“利用者”の引継ぎという大切な使命を負っています。この記事では、介護業界の譲渡・事業継承の実態を解説しながら、次世代へとバトンを繋ぐメリット・デメリットを真剣に考えてみます。

厚生労働省 社会・援護局、老健局、障害保健福祉部 介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等より引用
(注)発表日ベース。グループ内M&Aを除く。(出所)日経テレコン(元データはレコフデータ)より大和総研作成
    ※訪問介護、通所介護などの介護サービス、有料老人ホーム運営の 他、介護支援ロボット開発、介護用品製造、介護施設向け食品を含む

画像のグラフは厚生労働省資料からの引用で、介護業界のM&Aの件数推移を示しています。2019年には100件を超え、10年前に比べ倍以上増加しているのが分かります。国としても、介護業界のM&Aには関心を寄せています。なぜ国はM&Aを推進しているのでしょうか。

以下の文章は、中小企業庁より引用です。

中小企業経営者の高齢化は深刻であり、廃業による雇用や技術の喪失を防ぎ、世代交代等を契機とした成長を進めるため、事業承継が一層重要となっています。※

背景には、経営者年齢の平均年齢が60.5歳となっていること。また、統計的に事業継承後の売上が数年後に好転する事実が確認されているからです。長年続いた介護事業所が閉業することは、ノウハウや人材・人脈が失われ、地域の介護・福祉にとってマイナスです。

国としても、地域としても。そして、何より慣れ親しんだ職員と利用者との絆を大切にしたい。そんな想いの経営者も多いのではないでしょうか。

では、介護事業を引き継ぐ具体的な方法について中小企業庁が推進する方法をみてみましょう。

※中小企業庁ホームページ 事業継承を知る全国「社長年齢」分析調査(2023年)より引用

ここでは、中小企業庁が説明する以下の事業継承・売却の方法を解説します。

  • 親族内継承
  • 従業員継承
  • 第三者継承(外部の個人、M&A)

各施策を検討する上で、継承者に対し、次の点には特に注意が必要です。

  • 「継承者の内外への信頼性」
  • 「経営能力の見極め」
  • 「現経営者の個人債務保証の扱い」

特に経営者の個人債務保証を引き継ぐことは、継承者にリスクを負わせることになります。
本記事では、中小企業庁が公表しているトラブル事例を元に対策を考えます。はじめに、親族内継承の内容をご覧ください。

親族内継承のメリットは以下のとおりです。

  • 職員や関係先から心情的に最も理解されやすい
  • 株式相続などの税制面で有利
  • 株主相続を実施すると、経営が一体化され事業運営が円滑に進みやすい

上記の中でも「税制面」での優遇は期待が持てます。例えば「事業承継税制」です。

本制度は特例承継計画の認定を受けることで株式の相続税が猶予。または免除される制度です。ただし、同計画書の提出は2026年3月が期限となっており贈与期間も決まっています。

詳しくは以下「中小企業庁」のURLより広報誌「事業承継税制の活用をご検討ください」をご覧ください。

▶中小企業庁 事業継承

事業員継承のメリットは次のとおりです。

  • 経営能力の評価(人物評価)をしやすい
  • 従業員が経営参画することでインセンティブ制度の設けることも可能
  • 取引先への理解も得られやすい

上記の中でも「株式」をどのように譲渡していくかがポイントとなります。合同会社の場合は別の手続きが必要なため、ここでは割愛します。一定の割合を持つ株主は「経営権」を得ることが可能です。

しかし、職員が自社の株を購入する場合に多額の資金が必要なことが課題でした。そこで、従業員持株会を設立し、給与やボーナスの中から一定の金額を拠出して株式を購入する制度も制定されました。従業員持ち株会では、持ち株に応じた配当を出すことも可能です。

職員のモチベーションも高まるため、検討する価値があります。

第三者継承(外部の個人、M&A)のメリットは次のとおりです。

  • 経営経験や知見がある個人または法人を見つけやすい
  • 会社売却の利益を得られる
  • 第三者が経営参画することでシナジー(相乗効果)が期待できる

各事業継承の手法のなかでも、現経営者に「会社売却利益」を最も期待できる手法です。また、資金力や介護と関連ある事業会社に売却できると経営も安定し、グループとしてシナジー(相乗効果)が期待できます。

ここでは、デイサービスを運営する法人が訪問介護の会社を事業継承する場合を考えてみましょう。

デイサービスでは利用者人数の減少によって、介護士の人数に余剰が出たとします。訪問介護のニーズが高い場合、デイサービス職員を兼務させることも検討できます。また、資金力のある法人に売却できると「多額の売却益」も見込め、現経営者の売却利益という点では優れた事業継承の手法といえます。

最後に、各手法のデメリットを押さえておきましょう。

画像|中小企業庁 M&Aに関するトラブルにご注意くださいの広報冊子より引用

介護の事業継承で最も注意すべき点は「個人の債務保証」をどうするかです。

ご存じのとおり、介護報酬は2ヶ月後に入金されます。その間の資金は借入か自己資金となるため、多くの方が借入をおこない個人債務保証を実施しています。この場合、債務保証の引継ぎの“扱い”を契約上、どのようにするかが大切です。

専門家の意見を交え、継承者に引き継ぐのか。それとも、現経営者が返済して引継ぐのかトラブルがないように最も気を付けなければなりません。

画像の事例は中小企業庁より引用しており、広報冊子では以下の注意喚起も実施されています。

クロージング後、売手経営者の個人保証について、売手から買手に何度依頼しても契約に基づた移行がなされなかった。その上で、買手が売手の現預金等の資産を回収したが、必要な事業資金の送金がなされず、売手は倒産。その結果、経営者保証が残っていた売手経営者が債務を負うこととなり、個人破産に至ってしまった。

画像の事例は中小企業庁より引用しており、広報冊子では以下の注意喚起も実施されています。

中小企業庁では“少しでも違和感がある場合は1人で悩まず、まず相談を!”と周知しています。弁護士、各都道府県の事業継承・引継ぎ支援センターに相談することが重要です。

▶中小企業庁 事業継承を知る

本記事では、介護事業の事業継承について解説しました。主なポイントは以下のとおりです。

  • 事業継承の件数は増加しており、介護業界も企業の新陳代謝を考える必要がある。
  • 親族内継承:株式継承の税制優遇があり、内外の理解も得られやすい。
  • 従業員継承:株式買取を工夫し、インセンティブ制度を設けることもできる。
  • 第三者継承:会社の売却益が最も期待でき、シナジー効果も生まれやすい。
  • 注意点は継承者の内外の信頼性、継承能力。そして、債務保証の扱いを考える。

本記事は中小企業庁の広報冊子、厚生労働省の統計資料を用いて解説しました。事業継承は財務、法律、継承リスクなどに対し、専門的な知識と経験が必要です。弁護士や各都道府県の事業継承・引継ぎ支援センターとの相談を強く推奨します。

最後に事業継承を検討する経営者の方で以下の言葉が印象的でした。ご紹介します。

「私がお預かりした利用者さん。自分が最後まで責任もってみたい。経営からは退くけど、どのような形でも最後まで関わりたい」※2

本記事が事業継承を考えるきっかけになれば幸いです。

※2介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等より

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